生田絵梨花 1st写真集「転調」レビュー
この20年間でリリースされた写真集のなかで最高の出来。No.1の仕上がり。そう言い切れる、素晴らしい作品。
なぜそう言い切れるのか、生田絵梨花自身の素晴らしさと時間を取り戻していく、この2つに焦点を当てて書いてみます。
本作は生田絵梨花が5歳まで過ごしたドイツ、デュッセルドルフを舞台に撮影された5日間の記録であり。日本とは空気感も陽の差し方も異なる、異国の地での生田絵梨花の5日間です。
本作を見ていて、思うこと。
それは生田絵梨花自身の素晴らしさ、それ以上の写真1枚1枚の構図の完璧さ、美しさを感じます。なぜここまで美しさを感じるのか。それは懐かしさと物語性にあるのではないかということです。
生田絵梨花自身に5歳まで住んでいた記憶は無いそうです。巻末のインタビューでも「ドイツは外国だって意識は変わらない」と言っているように「異国の地 ドイツ」という意味合いが強い。
だけれども、本作は単なる「ロケ地ドイツ巡り」ではない、「記憶を取り戻していく旅」です。ピアノ、声楽、バラエティでの才能を発揮する、「天才 生田絵梨花」になる前の生田絵梨花の記憶を取り戻して行く旅なのです。
そして物語性。本作では街中を行きかう人々がよく写されています。
ファンからしたら「生ちゃん本人を見たいよ!」となるところ。だけどこの街中の人というのが重要なのです。写真集というのは物語です。アイドルの生き様であったり、コンセプト写真集であれば役を演じた過程であったり、その物語が写真に現れます。行き交う人の分だけ物語はあり写真集に厚みをもたらします。
この20年で最高の作品、それが生田絵梨花「転調」
グラビア復権の時代
2017年のグラビアシーンを一言で現すと、それは「グラビア復権の時代」ということです。どういうことかというと
「グラビアシーンが2000年代のような再び黄金期に入った」
「グラビア新時代に入った」
「媒体は相変わらず大きく力を持っている」
ということです。
見方を変えると
「グラビアをグラビアアイドルだけがやる時代は完全に終わり、グラビアアイドルはより苦しい時代に追い込まれていく」
ということです。
- 2000年代のような黄金期とは?
遡ること2000年代。グラビアシーンは盛り上がっていました。ほしのあき、安田美沙子、熊田曜子などレジェンドグラドルが多数発掘されていました。
この時代は
「グラビアがグラドルだけだった時代」です。
当時のヤングマガジン主催の「ミスマガジン」も、水着グラビア主体で新人グラビアアイドルの発掘がメインでした。
- グラビアの新時代とは?
2017年グラビアシーンのキーワード、それは「モグラ」です。
モグラとは「モデルとグラビアどちらもこなせる(どちらかというとモデルに重心を置いている)グラビアタレント」です。
泉里香、馬場ふみか、内田理央、逢沢りな、武田玲奈、池上紗理衣…今年ブレイクしたモグラは数多いです。
林田岬優、鈴木優菜などグラビアデビューの予想もつかなかったモデルもグラビアデビューしました。
このモグラブームはいまに始まったことではありません。
モグラブーム起源は2007年「グラデル」の登場です。
2007年に杉本有美と白鳥百合子の登場でグラビアシーンは変わりました。当時はまだ「グラデル」と呼ばれグラビアアイドルであることに重心が置かれていました。
2008-2009年に南明奈のブレイクで更にグラデルの裾野は広がりました。
そして2010年のAKB48ブーム。
グラビアシーンをAKB48が席巻しました。この現象は織田 祐二著「グラビアアイドル幻想論」に詳しいです。
そして2017年、モグラブーム。
モグラが席巻した理由は2つです
- スタイル、ビジュアル共に完成度が高く男性女性からも支持される
これは既存のグラビアアイドルと比べれば一目瞭然。「ソフマップ系」と揶揄されるグラドルは体格がよくないことが多い。
しかし、モグラは胸も大きく、スタイルもいいとなると人気が出るのは当然の帰結です。
- ファッション誌撮影で撮られること慣れている
グラドルに比べて撮られ慣れています。ファッション誌は自分自身よりファッションを見栄え良くするために撮ります。その場でのオーダーに合わせることに慣れています。つまりはグラビア映えする。
- 媒体の力とは?
ここで定義する媒体は「紙・雑誌」です。
デジタルコンテンツ急増の中、週間プレイボーイ、ヤングマガジン、ヤングジャンプは健在です。
2017年4月、グラビアシーンにまた一人新たなスターが現れました。
小倉優香、澤北るなです。
これが小倉優香だ!
芸能界デビュー自体はしていましたが、グラビアデビューし、火をつけたのはヤングマガジンと週間プレイボーイです。
泉里香もスタイルブックで下着姿を披露していましたが火をつけたのは2016年のヤングジャンプでした。
インスタ、YouTubeから登場するアイドルも多いですが、紙媒体の力は未だ絶大なものと言えるでしょう。
週プレも「ミスグラジャパ」というコンテストを始めます。
- グラビアシーンはどうなるか?
モグラブームが続いていくと思います。
小倉優香のような「いきなり表紙デビュー」も増え、モデルのグラビアデビューはどんどん加速するでしょう。
高山一実写真集「恋かもしれない」Review
「”彼女でデートなう”に使っていいよ」-twitterやinstagramで自撮りをする女の子がよく使う言葉だが、発売から1年経って本作を見た時、この言葉が思い浮かんだ。
水族館や地元千葉の鉄道といった写真から、高山一実とのデートをしている気分に浸れる、最高の写真集だ。
高山一実といえば、乃木坂46きってのバラエイティ班というイメージ。
乃木坂46のレギュラー番組「乃木坂工事中」の前身番組「乃木坂ってどこ?」時代からバラドルとしての才能を見せていた。現在もレギュラー番組「しくじり先生」で臆せず発言する。明るく、楽しい人、というイメージ。
しかしそんなイメージをいい意味で裏切る、しっとりとセクシーな写真で溢れている。美脚、ということはよくファンの間で言われてきたけど、ビキニになるとより映える。こんなにグラビア映えするアイドルだったんだ、と思った。
突然だが、筆者はアイドルの写真集はデート、だと思う。ファンとアイドルは永遠に繋がれない関係だし距離もある。それを写真の中で憧れのアイドルと距離を縮める。本作を見て改めてそう思った。
思えば、高山一実みたいなタイプって、実はクラスで人気のある子じゃなかったかなと思った。美人で彼氏のうわさが尽きないタイプより、明るく楽しい隣の席の子。高山一実はそんなイメージ。
その高山一実と念願のデートが叶った、夏の思い出。そう思ってこの写真集を見てみる。バラエイティでの元気なイメージは奥に引っ込み、漠然とした感情が浮かぶ。それこそが恋かもしれない。
橋本奈々未 写真集「2017」Review
この写真集を初めて見たとき、笑ってしまった。橋本奈々未は、もともとアイドルをやるような人ではなかったんだ、と思ったからだ。
帯に「彼女の”これから”が見えるのは、僕だけだろうか」と秋元康の言葉がある。正にそうだ。この写真集は橋本奈々未の、僕らが見ることが出来ない「これから」を映したものである。青春を乃木坂46に捧げ、引退で僕らを悲しみの底に突き落とし、僕らの追いつかない境地に辿り着き、その先へ行ってしまった、橋本奈々未なのだ。
誰にも媚びず美しくあれ、橋本奈々未にはそんな言葉が似合う。アイドルの写真集にありがちな「アイドル的かわいさ」に溢れる写真集は巷に溢れているが、これだけ「凛」という言葉を体現した写真集は初めてではないか。
巻末で暗い色のリップをで唇を染め、ドレスを纏ったショットがある。清純なイメージとは程遠いダークな印象だ。もう「アイドル橋本奈々未」は完全に捨て去り、その先へ行った。もう橋本奈々未はどこにもいない。
乃木坂463期生曲「3番目の風」
清廉、潔白、軽快-この曲にはこの言葉がよく似合う。「風」という言葉から初夏に吹く、夏の予感を感じさせる、爽やかな風を感じさせる。
単なるアイドルグループの3期生ではなく、乃木坂46の3期生なのだ。それだけに背負うものは大きいし期待も大きい。でも3期生はで軽々と飛び越えた。この曲は物語を作り上げていく、そのための決意表明の曲だ。乃木坂46はAKB48という大きすぎる宿命を乗り越えるために涙の物語を重ねてきた。
アイドルは物語、である。路上ライブやCD手売りといった物語を蓄積し、イベントを通してファンとの濃密な物語を共有し、それをブレイクするタイミングでファン以外にも放出する。どれだけ層の厚い物語を作り出せるかが問題なのだ。
この曲は物語を作り出した。”Hey!”という掛け声で一体感を作り出した。ファンとこれから進んでいくんだ、という強い決意を感じる。
単なる3期生じゃない、乃木坂46の3期生だ。
グラビアアイドルを見る2つのポイント
私は、2005年からもう12年アイドルヲタクをやっています。
そのなかでも、グラビアアイドル(以後、グラドル)が好きです。
AKB48、乃木坂46のようなグループアイドルよりもグラドルが好きです。
2005年にミスマガジン読者特別賞を受賞した、山崎真実のファンになって以来、私の青春はグラドルに支えられてきました。
グラビアのチェックが日課となり、10代男子の定番のジャンプ、マガジンは素通りし(1回も買ったことないです)、コンビニ行けば、月曜日は週刊プレイボーイ、ヤングマガジン、木曜日はヤングジャンプ、ヤングサンデー(あったんだよ、昔は)、その他、Sabra(休刊が惜しまれた)、スピリッツをチェック。
家に帰りアメブロにレビューをまとめる、その繰り返しでした。
当時、音楽雑誌「rock’n on JAPAN」に感化され、文章書きたい欲求と闘っていたので「グラドル雑誌作りたい!」となっていました。今の「BRODY」みたいな感じ。
年間300人くらいグラドルを見て、わかったこと。それが今回のブログのテーマです。
グラドルには見るポイントがある、ということです。
Hな見方をするだけじゃない、という話です。
見るポイントは2点。
「経年変化」と「間」です。
経年変化
まず1点目、経年変化。
これはグラドルが成長していく過程を見ること。
新人グラドルは表情も硬いし、ポーズもなんだかぎこちない。
それが3年も経つと、アンニュイ(私は昔、これをメロウと呼んでいた・・・)な表情が出来るようになる。
間を捉える
間、それはかなり難しいテーマ。
ビートたけしも「間抜けの構造」でテーマにしていました。
グラドルにおける間、それは写真1枚で見る人の心を掴むこと。
「なんか、印象に残らないよなー」というグラドルはこの間を捉えられていないことが多い。
グラドルについて、もっと知りたいという人は織田祐二著
を読みましょう。まだモグラブームが来る前の刊行で、黒船リア・ディゾン、AKB48を仮想敵としていた内容です。
是非。
平手友梨奈が表現者たる由縁-欅坂46とrock’n on JAPANの現在点と-
現在発売中、rock’n on JAPAN4月号は事件だ。
何が。欅坂46のセンター平手友梨奈の単独1万字インタビューが、だ。
このインタビューは欅坂46とrock’n on JAPANの現在点を知る重要なテキストなのだ。
欅坂を「語る」意味
欅坂46は「坂道シリーズ」である、乃木坂46の後発アイドルグループだ。
デビュー曲「サイレントマジョリティ」は事件だった。
再開発途中の渋谷駅で奇跡的に許可を得た2日間で撮影されたMV、時代を映した歌詞、楽曲のクオリティの高さ-その全てが多くの人が度肝を抜いた。
rock'n on JAPANの完全なる変質
rock’n on JAPAN-ロッキングオンホールディングスが刊行する雑誌である。
ロッキングオンホールディングスは、今やフードフェス「まんパク」やROCK IN JAPAN FESTIVALを運営する巨大エンタテイメント企業だ。
rock'n on JAPANはかつては90年代渋谷系をリードし、小沢健二の伝説の2万字インタビューや、レミオロメン、ACIDMAN、サカナクションを見出した「ロックオピニオン雑誌」だった。
RO69という音楽情報サイトも運営している。
音楽情報サイトは巷に溢れている。ナタリー、OTOTOY、CINRA.NET・・・数を上げればキリがない。しかしその中でも異彩を放っていた。
RO69は2007年に誕生した。rock’n on JAPAN 2007年8月号にて誕生の宣言文は掲載された。
「発端は、なぜロックを愛するひとたちのためにウェブサイトは存在しないのだろうか?というごく単純なものでした(中略)
あるいは知りたくもない情報がただ羅列されるだけのウェブサイトに、わたしたちは正直うんざりしていました」
この宣言は非常に心強かった。
しかし、今はどうだろうか。かつてのロック情報に溢れていた時代とは違う、E-girlsや嵐のレビューがサイトに載る時代になってしまった。
かつてのrock'n on JAPANとアーティスト達-ロキノン系は何だったのか。
rock'n on JAPAN系のアーティスト-ロキノン系とは何か。
一言でいうと「双方向で物語を生み出す」アーティスト達だ。
2007年3月号、巻頭表紙のDragon Ash「INDEPENDIENTE」インタビュー。
大ヒットを記録した、「Rio de Emocion」路線を受け継ぐラテン色の強いアルバム。
普通の音楽雑誌ならば、新作を褒め千切る場面であろう。
しかし、rock’n on JAPANはそうはいかない。
紙面ではフロントマン、降谷に対し
山崎編集長「そんなドラゴンアッシュが俺は今、やっぱり世間的にはちょっとわかられてない部分もあるのかなという気がするんですよ。今、ドラゴンアッシュ過小評価期なのかなあと。それに対するフラストレーションは?」
降谷「全然ないすよ」
山崎編集長「俺はある」
このインタビューは二重にも三重にも深い。
「IDEPENDIENTE」は傑作だが、「Rio de Emocion」ほどの記録は残さなかった。
それを編集長山崎は見越していたのだ。
音楽評論家としてDragon Ashを認め、音楽性の高さを褒めつつも、世間にフックしないことを降谷に問い質したのだ。
前述のDragon Ashのインタビューを踏まえると平手友梨奈のインタビューは深い意味を持つ。
インタビューは冒頭から
平手「パフォーマンスをしている自分と今の自分は違うんですよ。普段の平手友梨奈は飽きちゃうというか楽しくないんですよ」
これは衝撃的だ。
大人たちが決めたストーリーに乗るだけでなく、自らを客観的に見つめ表現の楽しさを語る。
新しいアイドル像を提示する。
アーテイストを誘導も出来ず、深い発言を引き出せることも出来なくなったrock’n on JAPANに冷や水を浴びせかける発言だ。
自ら言葉を発するアーテイストの再来によって、弱体化したロッキングオンを可視化した。
きっと2017年夏のROCK IN JAPAN FESTIVALのステージに欅坂46は立つだろう。
フェスに集う人たちは欅坂46をどう捉えるか。
rock'n on JAPANはアイドルも取り扱う普通の音楽雑誌になるのか。
欅坂ですらロキノン系として扱うかつてとはまた違った路線になるのか。
欅坂46とrock’n on JAPANのこれからが楽しみでならない。