平手友梨奈が表現者たる由縁-欅坂46とrock’n on JAPANの現在点と-
現在発売中、rock’n on JAPAN4月号は事件だ。
何が。欅坂46のセンター平手友梨奈の単独1万字インタビューが、だ。
このインタビューは欅坂46とrock’n on JAPANの現在点を知る重要なテキストなのだ。
欅坂を「語る」意味
欅坂46は「坂道シリーズ」である、乃木坂46の後発アイドルグループだ。
デビュー曲「サイレントマジョリティ」は事件だった。
再開発途中の渋谷駅で奇跡的に許可を得た2日間で撮影されたMV、時代を映した歌詞、楽曲のクオリティの高さ-その全てが多くの人が度肝を抜いた。
rock'n on JAPANの完全なる変質
rock’n on JAPAN-ロッキングオンホールディングスが刊行する雑誌である。
ロッキングオンホールディングスは、今やフードフェス「まんパク」やROCK IN JAPAN FESTIVALを運営する巨大エンタテイメント企業だ。
rock'n on JAPANはかつては90年代渋谷系をリードし、小沢健二の伝説の2万字インタビューや、レミオロメン、ACIDMAN、サカナクションを見出した「ロックオピニオン雑誌」だった。
RO69という音楽情報サイトも運営している。
音楽情報サイトは巷に溢れている。ナタリー、OTOTOY、CINRA.NET・・・数を上げればキリがない。しかしその中でも異彩を放っていた。
RO69は2007年に誕生した。rock’n on JAPAN 2007年8月号にて誕生の宣言文は掲載された。
「発端は、なぜロックを愛するひとたちのためにウェブサイトは存在しないのだろうか?というごく単純なものでした(中略)
あるいは知りたくもない情報がただ羅列されるだけのウェブサイトに、わたしたちは正直うんざりしていました」
この宣言は非常に心強かった。
しかし、今はどうだろうか。かつてのロック情報に溢れていた時代とは違う、E-girlsや嵐のレビューがサイトに載る時代になってしまった。
かつてのrock'n on JAPANとアーティスト達-ロキノン系は何だったのか。
rock'n on JAPAN系のアーティスト-ロキノン系とは何か。
一言でいうと「双方向で物語を生み出す」アーティスト達だ。
2007年3月号、巻頭表紙のDragon Ash「INDEPENDIENTE」インタビュー。
大ヒットを記録した、「Rio de Emocion」路線を受け継ぐラテン色の強いアルバム。
普通の音楽雑誌ならば、新作を褒め千切る場面であろう。
しかし、rock’n on JAPANはそうはいかない。
紙面ではフロントマン、降谷に対し
山崎編集長「そんなドラゴンアッシュが俺は今、やっぱり世間的にはちょっとわかられてない部分もあるのかなという気がするんですよ。今、ドラゴンアッシュ過小評価期なのかなあと。それに対するフラストレーションは?」
降谷「全然ないすよ」
山崎編集長「俺はある」
このインタビューは二重にも三重にも深い。
「IDEPENDIENTE」は傑作だが、「Rio de Emocion」ほどの記録は残さなかった。
それを編集長山崎は見越していたのだ。
音楽評論家としてDragon Ashを認め、音楽性の高さを褒めつつも、世間にフックしないことを降谷に問い質したのだ。
前述のDragon Ashのインタビューを踏まえると平手友梨奈のインタビューは深い意味を持つ。
インタビューは冒頭から
平手「パフォーマンスをしている自分と今の自分は違うんですよ。普段の平手友梨奈は飽きちゃうというか楽しくないんですよ」
これは衝撃的だ。
大人たちが決めたストーリーに乗るだけでなく、自らを客観的に見つめ表現の楽しさを語る。
新しいアイドル像を提示する。
アーテイストを誘導も出来ず、深い発言を引き出せることも出来なくなったrock’n on JAPANに冷や水を浴びせかける発言だ。
自ら言葉を発するアーテイストの再来によって、弱体化したロッキングオンを可視化した。
きっと2017年夏のROCK IN JAPAN FESTIVALのステージに欅坂46は立つだろう。
フェスに集う人たちは欅坂46をどう捉えるか。
rock'n on JAPANはアイドルも取り扱う普通の音楽雑誌になるのか。
欅坂ですらロキノン系として扱うかつてとはまた違った路線になるのか。
欅坂46とrock’n on JAPANのこれからが楽しみでならない。